私のご主人様Ⅳ

「ッ若!!早く脱出しろ!!崩れるぞ!!!」

怒鳴り付けるような叫び声に状況を思い出す。

信じられないほど早い火の回りに、床も壁も天井も、柱も炎に飲み込まれていく。

1秒でも早く脱出しなければ、生き埋めになる。だが、父親を残して行くわけには…。

「ッゲホッケホ…」

「ッ…」

そうだ、その前に酸欠になる。このままでは全員死ぬ。

琴音の口と鼻を手で覆い隠し、上着の中に琴音を入れる。

「親父さん!!」

「いいから行け!!」

舛田と父親の攻防は続く。

琴音の息が細い。この部屋ももう持たねぇ。

…ックソ!!

「行くぞ」

「ッ!?離せよ!!てめぇの親父だろ!見捨てんのかよ!?おいッ!永塚!!永塚!!」

琴音を片手で抱え、片手で舛田を引っ張っていく。
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