私のご主人様Ⅳ
あの炎の壁を越えて父親を連れ出す時間も体力もねぇ。
とにかく、ここを出なければ全員死ぬ。
そんなこと、させねぇ。
「親父さん!!親父さん!!!」
部屋を出た瞬間、待っていたのは火の海だった。
それでも、ここを行く以外に道はない。…行くしか、ないっ!!
「舛田!諦めろ!!」
「ッてめぇ!残されたのがてめぇの女ならんなこと言えんのかよ!!」
「…あの親父が守った奴を死なせんのか」
「ッ…くっそ!!」
舛田は振り返ったが、前を向いたのはすぐだった。
腕の中にいる琴音を抱き直し、軽く息を吸って止める。
走り出したのはその直後だ。