私のご主人様Ⅳ

あの炎の壁を越えて父親を連れ出す時間も体力もねぇ。

とにかく、ここを出なければ全員死ぬ。

そんなこと、させねぇ。

「親父さん!!親父さん!!!」

部屋を出た瞬間、待っていたのは火の海だった。

それでも、ここを行く以外に道はない。…行くしか、ないっ!!

「舛田!諦めろ!!」

「ッてめぇ!残されたのがてめぇの女ならんなこと言えんのかよ!!」

「…あの親父が守った奴を死なせんのか」

「ッ…くっそ!!」

舛田は振り返ったが、前を向いたのはすぐだった。

腕の中にいる琴音を抱き直し、軽く息を吸って止める。

走り出したのはその直後だ。
< 203 / 289 >

この作品をシェア

pagetop