私のご主人様Ⅳ
脇目もふらず、ただ出口に向かって駆け出していく。
あちこちで崩れる音が響く。
それがいつ目の前に来るか、頭の上に来るか、そんな恐怖も絶望も全てをはねのけてただひたすらに走り続ける。
「ッ若!!こっちだ!!」
走り抜けた先に出入り口の炎を必死に消す信洋たちの姿が見えた。
嫌な音が響き渡る。
崩れる。
頭が瞬間的に判断を下す。すぐそこまで見えた外に向かって地面を蹴った。
次の瞬間、身体中に走った衝撃に息がつまる。間に合った…のか?
「若!!」
「無事ですか!?」
目を開ける。煤だらけになった顔が並ぶ。
…何とか、間に合ったのか。
自覚した途端、息を吐こうとしてうまくできずに咳き込む。