私のご主人様Ⅳ

息をしようとしても喉が焼けるような痛みに咳が止められなかった。

「若、水飲める?」

「消防車と救急車呼べ!!怪我人集めろ!!」

少しずつ、息を整えていく。

平沢が指揮を執って怪我人を集め、動けるやつらは怪我人の手当てと家事の延焼を少しでも抑えようと動いていた。

屋敷に視線を向ける。

辛うじて原型を留めているのが奇跡と言いたくなるほど、屋敷全体が炎で包まれていた。

崩壊の音が徐々に大きくなる。その中に取り残されたままの父親の姿を思い出した。

「若、ここちゃん離して」

「…」

信洋の言葉に我に返る。視線を下にずらすと、両腕で琴音を抱き締めたままだった。

離そうと腕を動かそうとすると、全く腕が動かないことに気づく。

…なんだこれ。自分の体なのに、全くいうことを聞かねぇ…。

庇っていたとはいえ、琴音にも傷がある。離して手当てをさせなければと思っても全く琴音を抱く腕の力をゆるめられなかった。
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