私のご主人様Ⅳ
「若?」
「…抜けねぇ」
「力が?…無理矢理解くからな!」
実力行使を宣言した信洋に腕を捕まれて無理矢理琴音から離される。
何とか信洋の腕に琴音が収まる頃には、徐々に腕の力も抜けていった。
「…よし、ちゃんと息してる。生きてるよ」
「…あぁ」
信洋が肩の力を抜くのがわかる。
自分の上着を琴音にかけた信洋は、平沢に呼ばれて走っていく。
徐々に自分の心臓の音も落ち着いていく。手の感覚も戻ってきた。
琴音の頬を撫でる。その跡に炭がついて黒く染まったのを見て自分の手が煤だらけなのがわかった。
…情けねぇ。本当なら指揮を執り続けなければいけないのに、まだ終わってないのに。
気が抜けて、立ち上がるための気力も、先頭を走る自信も何もかもが引っこ抜けた。