私のご主人様Ⅳ
「ッ…」
思わず言葉を失った。琴音を中心に広がった赤い跡。抱き上げた瞬間、その赤が血であることを主張するように両手を染める。
出血が酷い。このままでは、確実に死を待つだけだ。
「琴音、琴音!!」
「車回せ!!!」
「急げ!!」
怒号と化した声が響く。その間にも琴音の体は急速に熱を失っていく。
その熱を逃がさないように抱き締める。なのに、それを嘲笑うように琴音は冷たくなっていくばかりで…。
「ッ若乗れ!!」
「平沢さん!あと頼みます!!」
信洋が回してきた車に乗り込む。ドアを閉める間も惜しく走り出した車。血は止まらない。全てを赤く染めるように赤い染みが広がっていく。
「琴音、琴音!しっかりしろ!!」
「飛ばすからな!!」
琴音の心音が弱い。急速に近づいてくる死を感じた時、戦慄が走る。
「ッ琴音!目ぇ開けろ!!!」
頼むから、逝かないでくれ…。
琴音の体を抱き締める。弱まっていく心音が響く。
頼むから、止まらないでくれ…。