私のご主人様Ⅳ

「…ゅ……ぁ………」

「ッ!?」

微かに聞こえた声にハッとして顔をあげる。

視線が重なる。目を開けた、琴音の瞳が俺を映していた。

「ッ琴音!!」

「……た」

「琴音?」

「………………」

何を、言ってる…?

琴音の声が聞こえない。聴こえない。

わかるはずなのに、こいつの言葉なら、わかるはずなのに、なにもわからない…。

頬に何かが触れる。冷たいそれに無意識に手を重ねた時、琴音の瞳に映る俺が欠けていくのが見えた。

「ッ琴音!寝るんじゃねぇ!!琴音?おい!琴音!!!」

今にも閉じてしまいそうな目は酷く眠たそうだった。だが、寝ることを許したら全て失うような恐怖に支配される。
< 212 / 289 >

この作品をシェア

pagetop