私のご主人様Ⅳ

「…」

「金ならいくらでも払う!だから、あいつを死なせるんじゃねぇ!!」

「…金で命は助かりません」

「あぁ!?」

「若!落ち着け!!」

「心肺機能が戻らなければどうにもならないんです。それは、どんなに高額な装置を使ってたとしても簡単には取り戻せない。…戻らなければ、助けられません」

「ッ!!」

琴音に視線を向ける。

戻らない。呼吸も、心臓も…。

心臓マッサージを続ける医者の手が震えていた。琴音を囲む看護師たちの表情が曇っていく。

…助からない。

そんな言葉がこの場を包み込むように広がる。
< 216 / 289 >

この作品をシェア

pagetop