私のご主人様Ⅳ
「………どこにいるんですか」
「集中治療室です。その中でも、医者の目が常に届く場所に。面会はできません」
淡々と告げられる言葉に琴音の容態の重さを痛感させられる。
あの時の血が、冷えていく体が、生気を失った瞳が、目の前に浮かぶ。
「…我々が出来ることは行いました。後は彼女の生命力に賭けるしかありません」
「…そう、ですか」
信洋の声に覇気はない。
頭によぎるそれを、振り払えないまま。浮かぶのは、傷ついた琴音の姿だけ…。
「…1つ、お伝えしておきます。彼女は今生きています。懸命に、命を繋いでいます。あなた方が折れるのはまだ早いですよ」
医者は一方的に口を開いてすぐ背を向けて部屋を出ていった。
なにも言葉が出なかった。
守りたかった。なのに、守られてばかりで結局傷つけているだけだ。