私のご主人様Ⅳ
「ここちゃんが死にかけてるんですよ!?…なのに、のんきにこんな……」
「琴音は死なない」
「ッ医者は、今夜が峠だって言ったんですよ!?」
「死なない」
「平沢さん!!」
「はぁ、あのなぁ。お前らがそんなんでどうするんだよ」
平沢は缶コーヒーを開けるとそれを一口飲む。
その余裕さえ見える姿になぜか視線が外せなかった。
「琴音が死にかけてることなんか分かってる。俺たちに出来ることが何もないことも、よぉく分かってる。…無力な自分が嫌で仕方なくなるし、こうなる前にどうにかできなかった自分を殺したくなる」
肩が跳ねる。図星を突かれた気がした。
琴音を守れなかったことを、手を離したことを、琴音を信じきれなかったことを…。
悔いて、悔いて、それでもどうにもならない現実に絶望した。
平沢は、それを見抜いていたのか…?