私のご主人様Ⅳ

少しの間放心するが、呼ばれてすぐに動いた。

平沢に、信洋に、何を言い返せばいいのか思い当たらなかった。

ただ、逃げるように診察室に戻ると、名蔵はすぐに立ち上がった。

「行きましょうか」

俺だけなのかとは聞かれなかった。

導かれるままについたのは集中治療室。一般の病棟と一室を挟まれたその空間に怖気づいたのを自覚した。

命を扱う病院でも、空気が違う気がした。

医者に言われるがままに準備をして、先を行く医者の背を追った。

やがて足を止めた医者は無言で部屋の中を見つめる。その視線を追って部屋の中を見た時、息が止まった…。

一瞬、誰なのか分からなかった。

ベッドの周囲を囲むように置かれた点滴、輸血…心電図、人工呼吸器…。

そのすべてが繋がれた先に横たわるのは1人。

ベッドも、シーツも、顔も、髪も…全てが白。そこに人がいることを意識しなければ見逃してしまいそうな…。

でも…、それは確かに琴音だ…。
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