私のご主人様Ⅳ
何事もなかったように片付けを再開すると、暁くんが隣に並んでくれました。
「…琴音は、親父さんのことちゃんと見てたんだな」
「?」
皿を洗いながら呟いた暁くんに視線を向けると、どことなく寂しそうな顔をしている気がした。
「…琴音は、父親がいるんだよな」
「コクコク」
「…会いたいって思うか」
「コク」
「…親って、そんなに子どもを大事にいてんのかな」
暁くんが呟いた一言は、軽く受け流すには重すぎて、咄嗟に反応ができない。
顔を覗き込むと、逸らされて視線も重ならない。
でも、困惑しているのははっきりして、暁くんがなにかを抱えているのははっきりと分かる。
私は永塚組の人たちのことをなにも知らない。どうして組に入ったのか、家族がいるのかさえ…。なにも知らないんだ。
洗うお皿がなくなって、手が止まった暁くんにそっと手を伸ばす。その手は遮られることなく暁くんの頬に触れて、撫でてもなにも言われない。