私のご主人様Ⅳ

分かっていた。…分かっていた、はずだ。

死にかけてた。今だって狭間をさ迷ってる。一般の病棟ではなく、集中治療室に入院している。

分かっていた、はずなのに…。

この現状を受け入れられない俺がいる。

『季龍さん』

最後に呼ばれたのは、いつだ?

最後に笑った顔を見たのは…。

覚えているはずなのに、記憶のなかにいる琴音が掻き消されていく。

どうしてこうなった。

どうして、守れなかった。

…全部俺のせい、なのか…?

俺が、あの時気を抜かなければ。

いや、そもそもあの時、手を離さなければ、こんなことにはならなかったはずなのに…。

俺のせいで、琴音は……。
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