私のご主人様Ⅳ
―客観視―
信洋の声にようやく我に返ったような反応をする季龍にいつもの覇気はない。
屋敷に戻ったことをたった今気付いたような反応をする季龍の顔には戸惑いすら見てとれた。
琴音の様子を見に行ってからずっとこうだ。
心ここにあらずという言葉がそのまま当てはまるような季龍の状態に、信洋は困惑し、かける言葉を決めかねていた。
結局かける言葉が見つからないまま季龍は車を降りる。平沢に車を任せた信洋があとに続くが、季龍が気づいている様子はない。
「若!おかえりなさい!!」
「若!!よかった!」
季龍が玄関を開けた途端、その音を聞き付けた組員たちが集まってくる。
彼らの顔には安心が浮かんでいたが、言葉のない季龍に徐々に異変を感じ始めたように困惑の色が広がる。