私のご主人様Ⅳ

「…ざまぁねぇな」

いつの間にか縁側には季龍たちに背を向けて庭を見つめる平沢の姿があった。その声は落胆の色に染まり、いつもの平沢らしさをなくていた。

「平沢さん…?」

季龍だけでなく、平沢の様子まで変わってしまったことに信洋は完全に混乱してしまっている。
そんな信洋を一目見た平沢だが、興味を失ったように視線を外し、懐からタバコを出すと火をつけ、一服する。

自身が吐き出した煙の行方を見つめていた平沢は、未だ源之助の胸倉を掴んだままの季龍に視線を流す。

「女1人に振り回されてるようじゃ、お前に組長なんか勤まんねぇよ」

「は…?」

「今すぐここから消えろ、坊主。怒りに我を忘れ、冷静な判断ができねぇ様なガキに俺はつくつもりはねぇよ」
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