私のご主人様Ⅳ

容赦のない言葉の数々と、季龍を完全に拒絶した平沢の目。それは今まで季龍に向けられたもののない物だ。

平沢は永塚組の幹部筆頭。

彼の言葉は若頭である季龍の次にこの永塚組において影響力を持つ。

だが、実際には平沢がその気になれば組員の半数は彼の言葉に従うだろう。それが例え、季龍の意志に反したものだったとしても…。

そんな平沢からの実質的な見切りに季龍は怒りを忘れ、ただ呆然としていた。

「え、ちょ平沢さん、言い過ぎじゃ…」

「信洋、てめぇもだ。この程度の男が、この永塚組の跡継ぎにふさわしいなんて、よくも親父に進言できたもんだな」

思わず季龍を庇う信洋だが、その信洋さえも平沢は切り捨てる。

いつもはダメ親父を気取っている平沢だが、彼は組の一員。しかも、永塚組の全盛期を引っ張ってきた男。永塚組に属する年数は季龍と信洋は比にならない。
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