私のご主人様Ⅳ
「…お前を見てると姉貴を思い出す。…死んじまったけど」
「…」
「姉貴はさ、生まれつき耳が悪くて、話せなかったんだ。親はそんな姉貴を邪魔物扱いして、酷い話虐待してたようなもん。まぁ、それは姉貴に限らず俺もだったけどさ」
苦笑混じりに話されていくのは暁くんの家族のこと。
頬に触れた手を離そうとすると、逆に捕まれて悲しげな目をする。まるで離すなと言っているみたいだ。
手首を掴んでいる手に触れようとすると、力は緩んで暁くんの手を包むように触れる。
「でも、姉貴は親の口元や字幕の入ったテレビとかから見て、言葉を覚えてったらしい。俺が物心ついたときには、姉貴はある程度口パクで話せてたから」
そうか、それで暁くんは読唇術を使えたんだ。小さな頃からお姉さんの声にならない声を聞き取っていたから…。
同時に納得できたのは、出会ったばかりの頃、読唇術が使える理由を信洋さんに問われて答えられなかった暁くんの悲しげな顔。
あれはお姉さんを思い出しての顔だったんだ。