私のご主人様Ⅳ
「待ってください」
「あ?」
そのまま病院から立ち去ろうとすると、名蔵に呼び止められる。
その目は真剣で、自然と足を縫いとめられるようにその場に立ち止まらされた。
「今なら聞けるでしょう。彼女の話をさせてください。僕には彼女の身元を引き受ける方に説明する義務がある」
「…分かった。話せ」
こいつ、分かってやってやがる。俺が昨日聞く余裕がないことも、覚悟を決めた今なら受け入れられることも。
気に食わねぇ。医者としての腕は信じられるとは思うが、こいつと付き合いはしたくねぇ。
そんな俺の思いすら読んでいるのか、名蔵はすぐに行動に移し、導かれたのは応接室だった。
既に用意されている琴音のカルテとレントゲン写真。それを簡単にセットした名蔵は早々に口を開いた。