私のご主人様Ⅳ
「まず、彼女の容体ですが、極めて危険な状態です」
「…」
「右肩、胸、左脇腹、そして左の太ももに銃弾を受けていました。それらの銃弾はすべて貫通していましたが、なにせ出血量が多かった。しかも、一時的にでも彼女の心臓は止まっていた。その影響で、彼女の脳の1部は壊死しています」
淡々と事実を語る名蔵の言葉にはよどみはない。
そして、その言葉にはわずかな希望さえも奪っていくような絶望すら垣間見える。
「手術自体は成功しています。ただ、右肩は粉砕骨折しています。肩を動かす範囲に制限が出る可能性は十分にあります。痺れやマヒが出る可能性もあるでしょう」
「…後は」
「…胸を貫通した銃弾は右肺を傷つけていました。傷としては大きくないものの、処置までの時間が長く、機能の何%かは失われている可能性はあります。具体的には過度な運動の制限などはあるでしょう」
可能性があると言う、確実ではない言葉。だが、それはそれだけ重い事態が起こる可能性の示唆だ。
この怪我が琴音の将来を大きく揺さぶる可能性は十分ある。日常生活が不自由になるほどの、障害を持つ可能性も…。