私のご主人様Ⅳ
「でも、親は姉貴を見ようともしなかった。ろくに食事も与えなくて、姉貴の声なんか聞こうともしなかった。姉貴はずっと、親に話しかけてたのに」
その目に宿るのは憎しみと悲しみが織り混ざった複雑な色。その色は急激に色が褪せて何も写さなくなる。
「…姉貴が死んだのは5年前。俺が中学から戻ったら、自殺してた。遺書に、生まれてきてごめんって書いて…。俺が学校行ってなかったら、姉貴は自殺しなかったはずなのに。姉貴の言葉を聞けるのは俺だけだったのに、全部捨てて逃げたんだよ。俺は…」
「暁くん…」
手を握る。あまりに力がこもったその手は暁くん自身さえ壊してしまいそうだ。
きっと、暁くんは恨みきれてないんだ。お姉さんに酷いことをした両親を…。だから、お姉さんが亡くなったのは自分のせいだと思ってる。
だから、傷ついても、その怒りが外に出ないで自分を傷つけるんだ…。
「俺は、もう目の前で誰かを失いたくない。それだけだ」
繋いでいた手が離される。そのまま背を向ける暁くんに、慌ててその背に手を伸ばす。
「っうわ!?」
ってお決まり!?つまずいて転びかけ、咄嗟に目の前の背をつかむ。