私のご主人様Ⅳ
痛がりながら信洋が車に乗り込んでくる。すぐに動き出した車。
信洋が振り返ってきて、さっきの話の続きを始める。
「関係ないってどういうこと?」
「そのままだろ」
「ッまさか、ここちゃんを捨てる気っだ!!?」
冗談でも許せねぇ言葉を吐きやがった信洋を座席越しに蹴る。こいつ、マジでふざけんじゃねぇ。
「琴音が寝たきりになったとしても、俺があいつを捨てるわけねぇだろうが」
「…はは、確かに、当たり前だった」
「分かったらふざけたこと言ってんじゃねぇ」
「へいへい。あ~あ、今のここちゃんに聞かせてやりてぇなぁ。きっと、顔真っ赤にするよ?若もそう思わない?」
…想像しかけてやめる。直接言えるわけねぇだろ。
そんな、プロポーズみたいな言葉…。
顔が熱くなるのに気付いて誤魔化すように外を見る。
いつか、いつか前までの日常が戻るように。
琴音が今度こそ安心してここにいられるように、俺は強くならないといけない。そのためには…。
先ほどから口1つ開かない平沢に視線を向ける。
まずは、こいつに認められなければならない。そのために、俺が出来ることは…。
これからのことに頭を巡らせ、流れゆく景色を見つめ続けた。