私のご主人様Ⅳ
そうして今朝、無事に一般病棟に移ったと連絡が入り、梨々香を連れて屋敷を出た。
本当なら他の奴らも連れて行きたかったが、流石に大人数で病院に押しかけることは出来ない。それは組員たちも分かっていて、梨々香だけがついて来た。
ただ、来ない代わりに見舞いの品だとか言ってあれこれ渡されそうになったのは断ったが…。
何とか梨々香が持つ花だけに収めたものの、その花も梨々香が折る勢いで握ってる。何となく、不憫だな…。
思わず呆れそうになったが、無理もないだろう。梨々香が最期に琴音を見たのは、琴音が連れ攫われたあの日だから。
そうこう考えているうちに見慣れてしまった病院が見えてくる。そうするといよいよ梨々香の緊張感も増したようで、すっかり表情が抜けてしまっていた。
「梨々香」
「ッ」
「笑って会うんだろ?」
「…うん」
あの日から、梨々香は自分のせいだと何度泣き崩れたか。何度、我がままを言わなかったらと後悔していただろう。
俺が自分を責めるのと同じように、梨々香もまた責任を感じていたんだ。