私のご主人様Ⅳ

梨々香の手を引き、琴音の傍に連れ出そうとするとその場に踏ん張って抵抗される。それでも、無理矢理引き寄せ琴音の枕元まで来る。

間近で琴音の姿を見ると、梨々香は音を立てて固まってしまう。震えている手を重ね、そっと琴音の手に重ねる。ビクリと梨々香が跳ねたのが分かったが、その手を離さなかった。

「梨々香、琴音は生きてる。そんな顔見せるために来たんじゃないだろう」

琴音ならこんな時なんて言うんだろう。どうすれば、梨々香を安心させてやれるのか。

ダメだな俺は。お前がいなきゃ、妹の不安1つ取り除いてやれない。

梨々香の手が琴音の手を握ったのが分かる。それと同時に手の甲に落ちた何か。

梨々香の顔を見れば、ボロボロ涙を流していた。

「ことねぇ…ッことねぇ、ごめんね」

そっと梨々香の手を離す。その途端、支えを失ったようにその場にしゃがみ込んだ梨々香は泣きながら何度も何度もごめんとこぼし続けた。

その肩を擦ってやることも、慰めるのも、今すべきことじゃない。

梨々香が許しを求めているのは琴音であって、俺じゃない。梨々香の折り合いがつけられるまで、何も声をかけられない。かけてはいけないんだ。
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