私のご主人様Ⅳ
梨々香の様子を見守っていると、ドアがノックされ開く。顔を見せたのは名蔵で、自分でも顔が険しくなったのが分かった。
「にぎやかですね」
「面会の人数が決まってんのか」
「いいえ。他の患者さんに迷惑にならない程度でお願いできれば」
相変わらず返しにくい返事をする名蔵を睨み付けても涼しい顔をしてやがる。
くっそ、気に食わねぇ…。
睨み続けていると、名蔵は手にしていたカルテを置き、琴音の枕元まで来るとその手をさすった。
「血が少ないせいか、葉月さんは寒さに弱い。勝手に外に連れ出さないでください」
「誰がんなことするか」
「添い寝してあげるのはありです」
「あ?」
「それと、傷が全て完治したらリハビリです。寝たきりでは、もし目覚めたときに回復までに時間がかかるので、毎日動かしてあげるんです。やり方はここに」
そう言いながら差し出してきた紙を思わず受け取る。
「使っている薬はこれです。食べられるようになったら、鉄分は多目に。目覚めたら必ず診察は受けないとダメです」
なに言ってやがるんだこいつ…。
脈略のない言葉を吐く奴ではなかったはず。妙な違和感に気持ち悪さを感じずにはいられなかった。