私のご主人様Ⅳ
「でもな、信洋。その仮説は正しくねぇ」
「っえ?」
今の話にどこかおかしい点などあっただろうか。
自分の記憶を辿っていると、平沢さんは急に膝をつき、雪を払う。雪が退かれたそこは、僅かに小さく地面に穴があったような痕跡があった。
「琴音は若の“真後ろにいた”。今の仮説はそれが前提になってんだろ」
「そうですね。…でも、それが何を」
そう言いかけて気付く。ここちゃんを襲った銃弾は、全て貫通していたという事実に。
「琴音が本当に若の真後ろにいたなら、若もまた銃弾による傷を負っているはずだ」
「でも、若は銃弾を浴びていない」
「それに、琴音が若の背後にいたなら、倒れたとき琴音の体は若に当たっているはず」
「でも、ここちゃんは地面に倒れた」
ピースがはまっていく。
今までの違和感が少しずつ消えていく。事実に近づいていく。
やはり、敵の本当の目的は…。