私のご主人様Ⅳ
「これは俺の仮説だけどな」
それを皮切りに平沢さんは言葉を繋ぐ。
奴はここちゃんに気付かれるまで引き金を引かなかったのではなく、“引けなかった”。
なぜなら、ターゲットであるここちゃんは若という壁に隠されていたから。
だから、奴は慎重に狙いを定めていた。
若に隠されたここちゃんを、障害物によって遮られた先にいるターゲットを確実に葬るためのコースを読んでいた。
そして、ここちゃんは奴に気付いた。
それも、ここちゃんは狙われているのが“若”ではなく、“自分”であることを認識していた。
その上で、ここちゃんは若を守るために自らを敵の前に晒した。
若に流れ弾が当たらないように“前”に出るのではなく、“横”に出た。
そして奴は障害物のなくなったターゲットを、狙い通りに撃った。
そこまで聞いて疑問が出来る。