私のご主人様Ⅳ

しかし、次の瞬間闇に包まれていた部屋が光に包まれる。闇に紛れていた影は光に当てられその姿をさらす。

黒一色に身を包む男たちに宿直の看護師は目を剥いた。

「っきゃぁぁああ!!」

「ッチ撤退!!」

看護師の悲鳴に男たちは一斉に駆け出す。

ドアをつかんでいた看護師を押し退け、男たちは病室を飛び出し、寝静まる病院内を駆ける。

その様子を廊下の影から見つめていた男は息を吐き、腕の中で浅い息を繰り返す少女に視線を向ける。

あと少し、あと少し遅かったら奴らと鉢合わせていた。

予想していなかった奴らの登場に百戦錬磨の平沢も肝を冷やした。

病院内が徐々に騒がしくなる。琴音を抱き直した平沢は呼吸を整えると廊下の影から出た。
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