私のご主人様Ⅳ

だが、そんなものは理由にならない。

信洋の本来の立場は情報収集だ。戦闘能力がほぼない信洋が組に、季龍の側にいるのはその能力を買われたからこそ。

敵の行動を先に察知するのも、信洋の重大な任務。

琴葉を狙うものがいると分かっていながら、下調べを怠ったのは信洋の過失だった。

「すみません」

「次はないぞ。奴らも手段を選んでねぇ」

「はい」

「出しますがいいですか」

それまで黙っていた森末が口を開く。それに反対は出ない。

これ以上長くここにとどまる理由はない。一刻も早くここに離れるべきだろうと全員の意見が一致した。

だが、下手に目立たないためとライトもつかずに走り出した車。

病院から少し離れた場所にある二車線の道路に入る前にライトはつけられ、車は永塚の屋敷へ向かって走り出した。

客観視 end
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