私のご主人様Ⅳ
「平沢、説教は今じゃなくていい。…信洋、昼間のことの報告はまだ受けてなかったな」
「ッはい。そのことですが、やはり奴の銃は確実にここちゃんを狙ったものだと判断してきました」
信洋の報告に親父の目は細くなる。
昼間、信洋は野暮用と言って病院に俺と梨々香を残してどこかに行っていた。まさか、親父の指示で動いていたのか…。
自分だけが置いてけぼりにされていることに気づかされ、目を伏せた。
「それに加えてだが、中野蓮美のバックについていた奴らがいる可能性が高い。そして、そいつらがおそらく、今回琴音に暗殺者を向けた黒幕」
「だろうな…。琴葉ちゃんを狙う奴らに心当たりは」
「それが分かったら、苦労しない」
よどみのない会話は親父も平沢、信洋でさえもその確信があったと言うこと。
俺はあの事件に黒幕がいるなんていう考えまでに至っていなかった。
いや、そもそもあれはもう終わったことだと勝手に判断して過去に目を向けることもなかった。
ただ、浮かぶのは血にまみれた琴音の姿だけで…。
自分の未熟さと平沢たちの差を見せつけられたような気がした。