私のご主人様Ⅳ
なにも話せないまま黙っていると、不意に差し出されたのはスマホで、それは通話状態のままだった。
登録されていないためか、番号が示されている。
受け取らないまま見つめていると、右手を掴まれ、スマホを持たされた。
顔をあげると微笑んで頷かれる。
恐る恐るそれを耳に当てる。でも、声は聞こえなくて、本当に繋がっているのかわからなくなるくらいだった。
「…」
なんて、言えばいいんだろう。なんて、言うべきなんだろう。
言葉が出てこない…。
『…琴音か?』
しばらくして、聞こえてきた声に心臓を掴まれたような衝撃が走る。
心臓の音が耳の奥で木霊する。相手に聞こえちゃうんじゃないかと思うくらい高鳴る心臓に、どうしちゃったんだろうって自分でも分からなくなる。
「ッコクコク」
う、頷くのが精いっぱいだよ…。あれ、でもこれって電話だから伝わらない…。