私のご主人様Ⅳ

嘘、まさか本当に…。

込み上げてくる思いが何なのか分からないまま、雪などもろともしない速さで突き進んでいく青海さんの背を必死に追いかける。

そして、近づくごとに聞こえてくるのは車のエンジン音と話し声。

その音が聞こえてくる頃には、確信に変わり、足を進めることに集中する。

「だーかーら!!やめろって言っただろ!1日ぐらい我慢しろよ!」

「うっせぇ。歩けばいいだろ」

「車どうすんだよ!明日除雪車通るっておっさんが言ってただろ!」

聞こえてきた声に梨々香ちゃんと顔を見合わせ、笑う。

珍しく怒っている声と、こちらも珍しく覇気のない声。

青海さんの目の前にはひときわ高い雪の壁があって、それを登り始める。それを下から見ていると、青海さんは反対側に顔を出す高さまで登りきった。

「若!信洋!」

「っえ、青海!?」

「お前…」

青海さんは天辺に足をかけて反対側へ消える。
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