私のご主人様Ⅳ
誰かが受け止めてくれたみたいだ。安心して肩の力が抜けると、暁くんが登ったまま手を伸ばしてくる。
「支えてやるから。怖いか?」
「…コク」
「ならやめとくか」
怖いというより、着物で雪を登るわけにはいかない。既にちょっと濡れているとはいえ、これ以上汚すわけにはいかない。
降りてきた暁くんは、私の手をとって壁の向こうを見るように顔をあげる。
「青海さん!琴音と先に戻ります!」
「っえ!?ここちゃんいるの!?っておい若!!」
信洋さんの驚いた声が聞こえた後、雪の壁をあっという間に越えてきた人影に、息が詰まる。
声を聞いただけであんなに嬉しかったのに、直接会ったら私どうなっちゃうんだろうって、昨日思ってた。
でも、直接顔を会わせた今、頭は真っ白で、何も言葉も出てこない。
力強い視線は私を捕らえて逃がさない。不思議な呪縛にかかったように固まる私は、近づいてきた季龍さんをただ見つめ返すことしかできなかった。