私のご主人様Ⅳ
「はーあ、ここちゃんかわいそー」
「信洋さん、痩せました?」
「かーもーなー」
背後から聞こえてくる会話に振り返ろうとしたけど、季龍さんの歩くスピードが速すぎて振り向けない。
振り向いたら転ぶ。絶対転ぶ!
季龍さんの手を握り返すと、少しだけ視線を向けられる。その目は優しくて、安心する。
でも、歩くスピードは変わらなくて、何とか足を進めるので精一杯だった。
「やっとついたぁ」
「…ハァハァ」
「琴音、大丈夫か…?」
そのせいか、戻ってくる頃にはすっかり息が切れて、1人だけ膝をついて息を整えるはめになった。
もう着物で雪道は歩かない。絶対!!
息を整えて顔を上げると、季龍さんに手を掴まれて引っ張られる。
ま、またですか…。もちろん逆らえず、連れて行かれた先は、居間として使っている部屋。
襖が開かれるとそこにはまるで季龍さんたちが来るのが分かっていたように源之助さんと田部さん、平沢さんが待っていた。