私のご主人様Ⅳ
2人に近づいていくと、信洋さんが気づいて笑う。
「ねぇ、ここちゃんちょっと若に抱きつきにいかない?」
「…」
ここでも同じようなこと考えてたんだ…。
首を横に振ると、でもさぁと言いながら道路情報に視線を戻す。
「この先、なんか事故あったらしくて渋滞してんだよねぇ。車の中、地獄じゃない?」
「…」
信洋さんが指で叩いている道路は確かに真っ赤な線が点滅している。
ここに来るまでの2時間でもきつかったのに、それが続くのは確かに嫌だ。
でも、だからといってどうして私が季龍さんに抱きついたり、キスすることになるの?
怒らせたのが私なら、私はむしろ近づかない方がいいんじゃ…。
「あ、いいこと考えた」
「?」
突然ニヤリとした信洋さん。信洋さんが見ている先を見ると、季龍さんがこっちに向かってくるのが見えた。