蜜月なカノジョ(番外編追加)
ズキン、ズキン…
何…? この痛みは、一体なんなの…?
意味がわかんない。なんで、こんなに胸が…
「______っ…」
ふと、肩に置かれていた手がするりとナオさんの頬を撫でた。
『彼』が照れくさそうに笑いながら歩き出すと、女性もしっかりと彼の隣に並んで一歩を踏み出す。
その姿はあまりにも違和感がなさすぎて____
ズキンズキンズキンズキン…
何を今更…。
だって、ナオさんは本当は直斗さんなんだもん。
私の知らない直斗さんなんてたくさんいて、むしろ私が知っているナオさんの方がほんの一部分に過ぎなくて。
あんな格好をしていても彼が好きになるのは女性で、今までだってそういう相手はきっとたくさんいたに違いなくて____
「 っ!! 」
その時、数歩足を進めたナオさんがおもむろに顔を上げてこちらを見た。
一瞬、ほんの一瞬だけ目があった気がすると思った次の瞬間、大型バスが目の前を通り過ぎて行く。
その風圧に我に返ると、私は弾かれたようにその場から逃げ出していた。
どうか『彼』が私に気付いていませんようにと願いながら。