蜜月なカノジョ(番外編追加)
申し訳ないと思うのならこのまま立ち去って欲しい。
それがいかにひどく自己中心的な我儘なのかわかっていても、無条件で震えだした体を自分でコントロールすることができない。
もしかしたらわざとぶつかってきたのかもしれない。善人だと思っても実は…なんてことはこれまでも何度もあった。その一つ一つの体験がますます自分を追い詰めていく。
もしかしたらという恐怖、それと同時に端から人を疑ってしまう己の醜さ。
「あの、顔色悪いけど大丈夫ですか? どこか痛めたんじゃ…」
「っ、だ、大丈夫ですから! すみません、ありがとうございます…!」
息をするのも苦しくなってきて最後の1つを慌てて拾うと、震える手で男性から複数の紙袋を受け取った。
失礼なのは百も承知だけれど、このまま立ち去ろう__
「あの、もしかしてボヌールの方じゃないですか?」
「………え?」
そう思っていた矢先、思わぬ事を言われた。
どうしてそんなことを…? まさか…また…?
やっぱりこれは偶然なんかじゃなかったのか____
その恐怖で足元がぐにゃりと歪んでいく感覚に包まれた、その時。
「あ、間違ってたらすみません。僕よくあそこを利用してるんです。店長の葵と知り合いっていうか…だから結構店員さんのことも覚えてて」
「………あ…」