蜜月なカノジョ(番外編追加)

言われて初めてまともに顔を見てみれば、確かにこの男性には見覚えがある。

…そうだ、確か葵さんの友人だとかでかなりの常連さんだったような。
男性への直接的な接客をしていない私ですらうっすらその存在は認識している。思い浮かぶのは葵さんを筆頭にどのスタッフともいつも楽しそうに談笑している姿で…

「やっぱりそうでしたか。ほんとにすみません、僕が不注意だったばかりに。どこも怪我はされてませんか?」
「あ…ほ、ほんとに大丈夫です! こちらこそよそ見していてすみませんでした!」
「いえいえ、そんなに謝らないでください。…でもこの偶然にも感謝ですね」
「…え?」
「あ、いえ、以前からお店であなたのことは見かけていたんですが、なかなか直接お話しする機会がなかったので」
「……」

その言葉には深い意味はないと思うし、確かに彼の言う通りで常連にもかかわらず私だけに接客をされたことがないのを不思議に思っていたのかもしれない。
だからごくごく普通の会話なんだってわかってる。

けれど…

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