蜜月なカノジョ(番外編追加)
ずっと背を向けたままの私の顔を覗き込もうとする気配を感じてさらに俯いた。怒らせてしまうかもしれないとわかっていても、それでも今は顔を見られるのが嫌だ。今すぐに掴んだ右手を離して欲しい。
「ごめんなさい…ほんとに、大丈夫ですから…だから早くお仕事に…あっ?!」
後半ほんの少し涙声になったかもしれない。そう思った瞬間、大きな手が俯いたままの私の頬を捉えて強引に上を向かされた。
目の前には真剣なナオさん…直斗さんの顔が。
「な、ナオさっ…離してっ…!」
「杏、何があった? 嫌なことがあったんだろ? こんな明らかにおかしな杏を置いてなんていけるわけがない。…それとも、俺にも言いたくないこと…?」
「…っ」
なんで。どうして。
いつもはほとんど出さない「男」をここで出してくるの。
今日は男としてのナオさんだから?
男の格好してるのに女言葉なんて話してるのを見られたら困るから?
そんなの…そんなのっ…!
「___?! っ杏っ、どうした、なんで泣いてっ…?」
「ど…してですか?」
「え?」
「どうして『直斗さん』なんですかっ…」
「え…」