蜜月なカノジョ(番外編追加)
「さっき杏が見た女の人は…。…いつか杏を連れていきたいなとは思ってて、でもそれはまだ先だと思ってたんだけど…」
「…?」
何を言っているのかよくわからない。何の話?
「…予定より早いけど。でも今行くのが正解だと思うから。杏、一緒に来てくれる?」
「…えっ? あ、あのっ、ナオさんっ?!」
「大丈夫。変なところに行ったりしないから。安心してついてきて」
「え? え? えっ?!」
困惑する私に全く構うことなくナオさんは右手をグイグイ引っ張っていく。いつの間に拾っていたのか反対の手にはしっかりと私の落としたはずの荷物が握られていて。
私のまわりには数え切れないほどのハテナマークが。
ナオさんのまわりには実に楽しげな音譜マークが。
きっと偶然その場に居合わせた人にもそれが見えたんじゃないかと思うくらい、実に対照的な私達。
それでも不思議なほどに怖いという感情が湧いてくることはなかった。
さっきは話しかけられただけでも竦み上がってどうしようもなかったのに。
たとえどんなところにつれて行かれたって、ナオさんと一緒なら絶対に大丈夫。
私の中を埋め尽くすのは、その絶対的な安心感だけだった。