蜜月なカノジョ(番外編追加)

「あの時の杏の様子じゃ覚えてなくて当然だと思う。…3年前、仕事でどうしても『直斗』として出掛けなきゃならないときがあって。今みたいにスーツ姿で出勤した日…その時俺はかなり体調が悪かったんだ。何とか気合で商談だけは終えたけど、それが済んだ途端反動が来たみたいに気分が悪くなって…ビルを出たところで歩けなくなって思わず蹲ってしまった」
「……」
「その時視界の端にいきなりこのハンカチが現れたんだ。女物だって認識した途端、正直めんどくさいことになったって思った。…けど、その手があまりにも震えてるからそんな意識も吹っ飛んだ」

震えていた…?
それって、もしかして…

「見ればハンカチを差し出してくれた女の子の方が大丈夫なのかって言いたくなるくらい顔色が悪くて。ガタガタ震えてるし変な汗は滲んでるし。さすがに心配になって立ち上がったら身を竦めて警戒されて。何でそんなに怯えてるのかはわからないけど、それでもその女の子はハンカチを差し出した手を引っ込めようとはしなかった」


…まさか。まさか____

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