蜜月なカノジョ(番外編追加)
第三章

恋するオカマの奮闘記①



「ナオさーん、すみませんけどこれ取ってもらえませんか?」
「ん? どれどれ?」

「ひゃあっ??!!!」

示された棚には目もくれず後ろから抱きすくめると、華奢な体は期待以上の大きなリアクションを見せてくれ、勢い余って杏が手にしていたケースが転がり落ちた。

「な、ナオさんっ?!」
「ん、なに?」
「なに、じゃなくて! 私はあれを取ってくださいって…!」
「ん、そうだね。でもまずは杏を抱きしめないと」
「ななっ…?! ひゃあっ!」

チュッとわざと大きな音をたててうなじにキスをすれば、たちまち全身を真っ赤にして氷のように硬直してしまった。けれどそれも最初だけで、強く抱きしめれば抱きしめるほど徐々に体が弛緩して目も蕩け始める。

あぁ…またそうやって無自覚に俺を煽る。
本当に杏は末恐ろしい。
本人が意識しないところでこれでもかと男の本能をくすぐり続けるのだから。

思うに、これまで杏を狙って来た変態共は本能的にそういう匂いを嗅ぎつけてターゲットを絞っていたのではないだろうか。ただでさえ男を異常に怖がっている杏ともなれば、ますます奴らのおいしい餌食になっていただろうことは想像するに難くない。

考えるだけで血管がブチ切れそうになるし絶対に許せない。
金輪際二度と不安な目に遭わせるつもりなどないが、これだけ無防備な杏を見ていると、いつどこで男にちょっかいを出されるかわかったもんじゃないと少しも気が休まることはない。
24時間縛り付けて俺の傍から離したくない。そんな欲望さえ湧き上がってくるほどに、日々杏への想いは募るばかりだ。


まさかこの俺がこれほどまでに誰かに溺れることになろうとは____

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