蜜月なカノジョ(番外編追加)
「あ、あの…?」
あまりにも心配になって声をかけたものの、その子はビクッと肩を竦めて怯えていた。小柄な体のせいか余計にその怯え方が強調されている。
端から見れば長身の俺がその子を追い詰めてる構図に見えるだろう。
それでも差し出したハンカチを引っ込めようとはしない。
何がどうなってるのか全く理解できない状況だったが、とりあえずその子が俺が受け取るまで手を引っ込めるつもりはないのだろうことはわかった。
迷ったが、あまりにも具合の悪そうなその子がいたたまれなくなって、俺はそのハンカチを受け取ってしまった。
「…すぐそこにタクシーを止めてますから、それを使ってください…」
「えっ? あっ…!」
今、なんて?
そう聞き返そうとしたときにはその子は駆け出していた。
呆然とその後ろ姿を見つめながら、俺の手には確かに彼女がいたという証拠のハンカチだけが残された。