蜜月なカノジョ(番外編追加)
彼女は絶対にまた来てくれる。嬉しそうに足取り軽く店を後にした後ろ姿をじっと見つめながら、俺はそう確信していた。
そうして今になって自分の手が震えていることに気付く。
彼女に再会し、会話をし、またこれからも会えるのだという奇跡が起きたことに震えていた。
「ちょっとちょっと~、何いきなりカウンター業務なんてやってるのよ? スタッフが困惑してるでしょうが!」
別の接客から戻って来た葵が開口一番説教をたれ始めた。いつもなら辟易とするところだが、今日はそれすらも祝福の言葉に聞こえてならない。
「葵……ミラクルが起こったわよ」
「はぁ? ミラクルって…あんた何言ってんの?」
「あの子なんだ」
「あの子? 何を言って____」
意味不明とばかりに顔をしかめた葵だったが、やがて何かに思い当たるとハッと俺を見た。
「も、もしかして…あんたがずっと探してた子ってこと?」
「そういうこと」
「う、嘘でしょう?! まさかうちのお客さんだったなんて___」
「今日で2回目だって言ってた。でも絶対また来て欲しいって言っておいたし、それがなくても多分彼女は来てくれる」
葵にとってもこの偶然は驚き以外の何ものでもないのだろう。