蜜月なカノジョ(番外編追加)
彼女がこれまでどれだけの苦しみを味わってきたのか。
言葉などなくとも、その涙が全て物語っていた。
「ナオ」の前ではあんなにも生き生きとしている彼女が、ひとたび男のことを考えるだけでこれほどまでに傷つき怯えた顔を見せる。
一体どれほどの目に遭ってきたというのか。
あの日彼女があんなにも震えていた理由、それが今はっきりとわかった。
そしてあの行動に移すことが彼女にとってどれだけの勇気を必要とするものだったのか。
それでも彼女は___
ギリギリと机の下で作った握り拳が震えて止まらない。
腹の底から湧き上がってくるのは、どこの誰ともわからない彼女を苦しめてきたであろう男への怒り。そして、これだけ傷つき怯えている彼女を何としても守ってあげなければという確固たる想い。
彼女の笑顔を守るためならどんなことでもする____
俺をそう駆り立てるその気持ちを何と呼ぶのか、そのことを自覚するまでにそう時間はかからなかった。