蜜月なカノジョ(番外編追加)
嵐の前の静けさ
「ありがとうございました~!」
送り出したお客様のトレーを抱えてカウンターの中に戻ると、何故か店長の葵さんがニコニコ顔でこちらを見ていた。
「…? どうしたんですか?」
「んーん。杏ちゃんもすっかりこのお店に馴染んだな~と思って」
「えっ?」
「だってほら、最初の頃は接客するのにもビクビクしてたでしょ? 今じゃあすっごくいい笑顔見せるようになったな~って」
「そ、そう、ですかね…?」
「うんうん。ナオ…じゃなかった、オーナーが猫可愛がりしたくなるのもよくわかるわ」
そ、そんな言い方をされると照れる。
とはいえその通りめちゃくちゃ大事にされて可愛がられてるって自覚があるのだけど。
「でもまだまだです。接客って言っても基本女の人にしかできないですし…」
「そんなこと気にしなくていいの! 元々うちのお客さんは大半が女性なんだし、杏ちゃんの事情はうちだって理解した上で雇ってるんだから。それに、そういうことを含めても杏ちゃんの働きぶりには感心してるのよ?」
「あ、ありがとうございます…」
「ふふっ、そうやってすぐ照れるところも可愛いわよね~」
こんなに褒められていいのだろうかと思うほどに甘やかされてちょっと怖いくらいだ。