蜜月なカノジョ(番外編追加)

「…言われなくたってそんなこと私が一番わかってる。自分は杏を騙してるんだってことも、騙した上で成り立ってる関係なんだってことも。全部これでもかって自覚してるわよ!」
「……」
「でもあんなに傷ついてた杏にいきなり全てを打ち明けるなんてできるわけがないでしょう?! 下手すれば生きることにすら絶望しかかってた杏を放っておけない。笑顔になってくれるなら、守ってあげられるならたとえ嘘をついたままでも傍にいたい。それじゃダメだってわかっててもそれ以外に選択肢はなかったのよ」
「ナオ…」
「私だってわかってるわよ。いつまでもいまのままじゃいられないって。一緒にいる時間が長くなればなるほど、ばれる可能性は高くなるんだってこと___」

最近はその「いつか」がいつやって来るのかとビクビクしている自分がいる。

「…いっそのこと全部話しちゃえばいいじゃない」
「え?」

驚いて振り返った俺を、葵は至極真剣な顔で見ている。

「確かにあんたは嘘をついてるけどさ。でもそこに悪意は全くないでしょ? ナオになったのだって彼女に出会う前のことだし、実際あの子はあんたに救われてる。そのことに一切の偽りはないじゃない。正直に全てを話して、あんたがどうして杏ちゃんをそこまでしてでも助けたいと思ったのか、その気持ちも全部打ち明けたら……私は今のあの子ならきちんと受け止めてくれるんじゃないかと思ってるけど」
「……」

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