蜜月なカノジョ(番外編追加)
恋するオカマの奮闘記④
その日は小春日和という名にふさわしく、朝から雲一つない穏やかな一日だった。
「くそーーーっ、マジかよっ…!」
___はずなのに。
午後の商談を終えて次に向かおうかと思っていた矢先、数分前の快晴がまるで嘘のようなゲリラ豪雨に見舞われた。傘を持ち歩いていた人間などほぼ皆無。通りを歩く人という人がずぶ濡れになった。
それは俺自身も例外ではなく、濡れていないところはどこもないんじゃないかと言うくらい、ものの見事に一瞬にして濡れ鼠となってしまった。
「こりゃシャワー浴びなきゃ無理だな…」
たまたまマンションの近くにいたため駆け込んだはいいものの、鏡に映る自分を見て着替えるだけで済みそうにないひどい有様に溜め息がでた。
「男の格好でいいなら楽だけど、そういうわけにもいかないよな…」
この後打ち合わせがあるとはいえ、会う予定なのは友人のカナだ。
奴と会うだけなら男の俺のままでも一向に構わないのだが、その後ここに帰って来ることを考えればやはりナオにならないわけにはいかない。
ナオになるのにはすっかり手慣れたものだが、それでもヅラを被り多少のメイクをしてパットを詰め込んで服を着て…それなりに手間を取られるのも事実なわけで。
友人とはいえビジネスパートナーを待たせるわけにはいかないと、廊下に点々と衣服を脱ぎ散らかしながら浴室に駆け込むと、急げとばかりに勢いよくシャワーのコックを捻った。