蜜月なカノジョ(番外編追加)
「あ、杏っ!! 待って、落ち着いてっ!!!」
「いやああぁああああっ!!!」
「杏ちゃんっ、お願いっ、話を聞いて! これには事情が…!」
「いやああああっ! 触らないでぇっっっっっっ!!!!!」
とにかく落ち着かせなければと伸ばした手が凄まじい力で振り払われる。
それは明らかな「拒絶」。
杏から示された初めての拒絶に、俺の体は金縛りに遭ったように凍り付いてしまった。
「う゛っ…!」
「あ、杏っ……あっ、待って! お願い、待ってちょうだいっ!!!」
だがその一瞬の判断ミスの間に杏が目の前からいなくなってしまっていた。
しまったと思ったところでもう遅い。必死に叫んだが止まってくれるはずもなく、しかも俺は素っ裸というこの上なく情けない状態。
「あぁっ、くそっ! なんで、よりにもよってなんでっ…!!」
部屋に駆け込んで手当たり次第に衣服を身につけると、廊下に転がっていたスマホを掴んで全速力で部屋から飛び出した。
おそらく杏を乗せていたであろうエレベーターが上昇してくる。連打したところで早くなるわけでもないのにボタンを何度も何度も叩きつけながら、反対の手で杏へと電話を掛けた。
だが当然のように電話は繋がらない。何十回、何百回慣らしても留守番電話の無機質な音声が繰り返されるだけ。