蜜月なカノジョ(番外編追加)
「…………」
スースーと寝息を立てて深く眠る顔をじっと見つめる。
色んなことがありすぎたせいでその顔には疲労が色濃く浮かび上がっている。
今も尚頬には幾筋かの涙の跡がうっすら残っていて、その原因が自分だということに息もできないほどの後悔の念が押し寄せる。
…あれから全身ぼろぼろになった杏を連れて帰ると、一通り彼女が落ち着いたところで俺自身のことを打ち明けた。いつかばれる時がくることは覚悟していたが、最も最悪な形で知られてしまったことに、今更ながら友の助言を素直に聞いていなかった自分を激しく恨んだ。
とはいえ今更過ぎたことをどうこう言ったところでどうしようもない。
全ては己が選んだ道なのだから、その結果がどんなものであれ、それを受け入れなければならないのも俺の宿命だ。
いかなる理由があれ俺が嘘をついていたということは変わらないし、杏を深く傷つけた事実も消えない。激しく罵倒されることなど想定内だし、金輪際彼女とは会えなくなってしまうかもしれないという決別宣告も覚悟していた。
…が、彼女はそのいずれもしなかった。
出て行った時とは対照的に終始冷静で、一つ一つ、質問に答える俺の言葉をただ黙って聞いていた。
激しく混乱し、戸惑いを見せながらも、最後に彼女が口にしたのは…