蜜月なカノジョ(番外編追加)

だが杏がありのままの俺を受け入れてくれてからは、欲望も体の変化も隠すことをやめた。むしろ杏には全てを知っていて欲しい、そう思うようになった。

もちろんいきなり全てを受け入れて欲しいだなんて思っていない。
けれど、男としての俺の全てを受け入れたいと望んでいる杏の願いに俺自身も応えたい。そのために毎朝起きてから少し濃厚なスキンシップをもつことが今の日課となっている。

寝起きは杏もぼんやりして羞恥心や恐怖心が和らいでいることもあって、快楽にとても素直に反応してくれる。そのうちはっきり覚醒してからも拒絶反応を示すことはなく、そんな杏を見ながら俺は少しずつ触れ合い濃度を上げていっているのが現状だ。

本音を言えば抱きたいに決まってる。体の変化は欲望に忠実だし、おそらく杏の体も俺を受け入れる準備は整っていると思う。
が、一方でこうして少しずつ深め合っていく今の関係が心地よくもあるのだ。

いつか「その時」を迎える日は必ずやって来る。
でもそれは今ではないと思えた。

杏の中にはきっと「好きな人を受け入れたい、受け入れなければ」という無意識のプレッシャーのようなものが存在している。
それはこれまで男が恐怖の対象でしかなかった杏ならではのものだろう。
女として自分が相手を満足させていられるのかわからなくて不安なのだ。

そんな杏をより愛おしいと思うし、だからこそ今の関係を大事にしたい。
焦らなくても俺たちには時間がたっぷりあるし、こうして日々ステップアップしていきながら、そのうち迎える「その瞬間」を楽しみに待ちたいと思う。


要するに、今の俺は間違いなく世界一幸せな男だと胸を張って言えるってことだ。
こんなことを言えばまた葵からのろけてんじゃねー!とキレられそうだが。

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